部屋の中で、目を見開いて変顔をしている男が一人。
もちろん俺のことですよ。
見ていたわけではないけれど、恐らく想像するに、患者が扉を開けるときにその気配を感じ取った看護師①&②は呪縛から解かれたようだ。
ただ、俺が一人乗り遅れたのね・・・・。
部屋に入ってきた患者夫妻は俺を見て止まったよ。
一瞬動かなかったよ。
俺と目が合ったからだね。
よくわかるよ、その気持ち。
俺と、患者夫妻の様子を見た看護師②は戸惑ったような様子で、
看護師②『・・・ああぁ、えーっと、こっちは気にしないでください。初めてなんですよ、彼。』
流しやがった!
こいつ、流しやがった!
なんか説明してくれるのかと思ったけど流しやがった!
あれを聞いただけじゃ何がなんだかわかんねーだろ!
なんか俺がかわいそうな人みたいじゃないか・・・・。
もうだめだ、本当に気分が悲しくなってきた。
だってほら、目から涙が・・・・。
看護師①『そろそろ、はじめましょうか●●さん。こうよ!こう!』
涙が・・・・。
看護師①『上まぶたのまつ毛の生え際から一気にこう!』
なみだが・・・・・。
看護師①『そのまま、下のまぶたも同じように、こう!こう!えい!』
ナミダガ・・・・・・・。
看護師①『●●さん、まつ毛長いわねー、うらやましいわ、おばちゃん、もう抜けちゃってまつ毛ないのよー』
ナ、ナ、ミ、ダ、ガ・・・・・・・・・
看護師①『●●さん、若いわねーまぶたの力がすごい!ぐいぐい押し戻していくー』
ナ、ミダ・・・・・・・。
看護師①『私くらいの年になると、まぶたがダラダラで楽なのにねー』
ナミダ・・・・・・ってなんだっけ?
ナミダを忘れた俺は、もはやマシーンのようになった。
感情の臨界点を突破して、もはや残りカスしかない。
だからだろう。患者夫妻の声がよく聞こえる。
いつのまにか、医者の先生も部屋に戻ってきた。
これが現実逃避なんだね。
勉強になったよ。
患者夫『先生、最近はどうですか?山いってますか?』
医者『いや、全然だね。最近はここにこもりっきりですよ。たまには休みがほしいですよ。』
患者妻『また、一緒に行きましょうよ。みんな先生が来るの楽しみにしていますよ。』
医者『ところで、今週末も山にいくんですか?』
患者夫妻『はい、そのつもりです。』
医者『だったら、いつもの目薬に一つ追加しましょう。気圧が変化すると目が乾きやすくなるかもしれませんからね。』
その後、修行を続けた俺は、合計でコンタクトを4組床に落とした。
感情を亡くした俺はもはや何もできないダメ人間になっていた。
悪魔の看護師が2人で俺に襲ってきたわけではない。
本当にうまくできずに、気が付くと床に落としているのだった。
5組目のコンタクトをうんざり顔で用意した看護師①は無言で俺にコンタクトを私去っていく。
医者『●●さん、慌てなくていいですよ。昔は大学病院に30人くらいまとめて集めて3日間かけてやったもんですよ・・・・。』
明らかに笑顔が引きつっている。完全に笑顔が失敗している。
その時、奇跡が起こりました。
誰にも関心を持たれなくなって、一人で黙々とコンタクトの修行をして、約20分。
やっとコンタクトが目に入りました。
ランデブーに成功しました。
なんか、疲れちゃったよ。
もう一度、コンタクトをいつかしようとした時、あの眼科の景色が思い浮かべられてしまうのだろうか?
もはや網膜と脳裏に焼き付けられてしまった気がする。
世間のコンタクトを使用している人は、いつもこんな感じなのね。
いや、ないか。
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